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2010年1月18日 (月)

【人・街・声】御徒町 笹本繁宏さん(87) たばこ店主が写した思い出 (産経新聞)

 今年開校106年を迎える下町・上野の台東区立黒門小学校。戦争前に建てられたレトロな校舎に443冊の写真アルバムが保管されている。中身は昭和から平成にかけての14年間、入学式や運動会などで子供たちの姿を生き生きと写した約3万枚。カメラマンは専門の業者ではなく、近所のたばこ店主だった。(徳光一輝)

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 ≪学校生活の記録(S54年度より)笹本繁宏氏の寄贈によるアルバム≫

 昭和5年に建てられた校舎3階にある板張りの会議室。木製の大きな本棚にこう張り紙が出ていた。ガラス戸を開けたら「セキセイポケットアルバム」がぎっしり。最初は昭和54年の「大運動会」で、最後は平成4年の入学式。背表紙に丸っこい字体で「こいのぼり集会」「七夕集会」「日光林間学園」「学芸会」「日曜授業参観」「もちつき集会」…と行事名が記され、整然と並んでいた。

 443冊にサービス判のカラー写真が72枚ずつ収めてあり、単純計算で3万1896枚。「すごい数ですね」と話す現在の副校長、石田隆さん(46)によると、平成4年以降はずっと業者を雇っている。

 石田さんは「アマチュアの方に頼むのは珍しい。今のご時世だと『なぜプロでない人が撮っているの? 目的は何ですか?』という話になってしまう」。

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 黒門小から東へ400メートル余り。JR御徒町駅南口にある「笹本たばこ店」のレジ前にカメラマンは立っていた。昭和33年創業。扱うたばこは500種類。壁一面にカートンが黒門小のアルバム同様、整然と並ぶ。

 白い頭髪と白いヤギひげを同じ長さだけ生やした店主は「ずっと前にササモトさんの子供3人がみんな黒門小を卒業しているんだ。その縁で卒業式の写真を頼まれて、『写真のおじさん』ということでやったんだよ」。自分で自分をササモトさんと呼んだ。

 「子供たちも偏って写しちゃいけない。特定の子ばかり写していると、ほかの子がかわいそうだからね。それで枚数が増えた。修学旅行や林間学校も泊まりがけで同行して、先生たちの反省会にも出ていました」

 大正11年、仲御徒町生まれ。昭和17年に早大法学部を繰り上げ卒業して日本鋼管(現JFEスチール)に入社した。19年4月、鈴本演芸場の寄席から帰宅したら赤紙が届いていた。敗戦でシベリア抑留2年半。帰還後に復職し、55歳の定年まで勤め上げた。

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 カメラを始めたのは旧制中学時代。戦後はアマチュア団体の名門「プレザントクラブ」に37年間参加した。カメラ誌のグラビアを飾り、定年前年の51年には東京の風景を写し撮った個展「写版東京図会(ずえ)」を銀座ニコンサロンで開いた。

 定年後、母と妻が営んでいたたばこ店に専念していたとき、黒門小の「写真のおじさん」を頼まれた。

 昨年8月からは店番の合間、素足にサンダル履きでカメラをぶら下げ、山手線に乗って東京の街を写して歩いている。行きたい街をメモ用紙にリストアップし、ひと駅ずつ降りて回る。タイトルは「平成写版東京図会」。

 33年ぶりの東京の風景は「子供が少なくなったね。昔は道路が遊び場だった」。

 かつてカメラに収めた黒門っ子たちも三十路、四十路。

 「街を歩いていると、時々顔を合わせるよ。みんな大きくなったなあ」

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